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  • 執筆者の写真Iori Imai

金木義男の優雅な言葉

更新日:2023年7月24日

えー先日、お世話になっている喫茶店のマスターから連絡がありまして今月いっぱいでお店を閉めると。

私も金木さんもそのマスターに随分とお世話になったもんですから閉まる前にお店に遊びに行く事になりました。

お店の集合時間はお昼の1時。

自転車でお店の前に着くとなんと休日。

がっくり肩を落として、金木さんに連絡しようとしたら、お店からひょっこり顔を出す金木さんの姿が。

お店は休みですが、マスターとマスターの奥さんはお店にいたのです。

店内に入るやいなや、金木さんは上機嫌で、自分の話ばかりしてます。

こうゆう場合、店のマスターに閉店する事への、慰みや激励をするのが筋なんでしょうが、金木さんは御構いなし。

自身の病気を克服した話、自分の哲学の話をやたら丁寧に長々と話します。

普段金木さんは人と会ってないからここぞとばかり、機関銃の様に言葉が次々とでてきます。

マスターも人がいい。

そんな金木さんの話をニコニコと聞いているではありませんか。

私は、金木さんの話の隙をみて

「マスター、今月でお店やめるそうですね」

「あーそうなんです、色々とありまして」と今までニコニコしてた顔が曇ります。

あーこれ以上、踏み込んじゃいけない。

踏み込むにしても段階があると思った矢先。

「なんでや!」と金木さん。

この爺さんには順序というのがございません。

金木さんの迫力に押されて

言葉を押し出す様にマスターが話してくれました。

なんとマスターの母親が転んでしまい、そこから入院、更にはマスターの奥さんの両親の介護もあり、喫茶店の営業をしていると、暗い顔になってしまう、そんな顔をお客さんに見せられない、また時間も取られて業務に支障が出てきてしまったのでお店を閉める事になったのだそうです。

そこから、高齢の親との付き合いの話になり、金木さんと金木さんのお母さんのやりとりが非常に感動的だったのです。

金木さんがまだ若くてお母さんが高齢な頃、中古の家を買ったそうです。

しかしながらお母さん、その家が気に入らない。

中古とはいえ、高額な買い物です。

お母さん、随分と不満があったのでしょう。

その家に住み始めてから、日に日に、お母さんは人が変わったように愚痴ばかり言う人になってしまったそうです。

そこで金木さんはお母さんにこうゆう言葉をかけたそうです。

「お母さん、ありがとうな」

「なんでありがとうやの?」

「お母さん、お母さんの齢になると普通は弱って、俺ら世話せなあかん、ほやけどお母さんは元気や ほやから、ありがとうな」

金木さんはお母さんに毎日、ありがとうと言い続けたそうです。

お母さんも感動して金木さんの言った言葉を紙に書いて欲しい、それを長崎の住む、妹に届けたいと言ったそうです。

それから、お母さんは、ニコニコとして毎日過ごされたという事でした。

その話を聞いて、僕もマスターも感動しました。

僕は金木さんに「じゃあ金木さんは奥さんに、毎日『ありがとう』って言ってるんですね?」と聞きました。

すると金木さんは

「そんなん言うたことないわ!」

マスターは「どんなオチやねん」

と笑っていました。


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